公認会計士が多すぎるって聞いたけど、本当にそうなのかな?
公認会計士は多すぎる!という意見を耳にしたことはないでしょうか?
実際のところ、監査法人の現場にいた筆者の意見としては公認会計士が多すぎると思ったことは一度もありません。猫の手も借りたいほど、現場は逼迫していました。
今回は公認会計士の実際の人数に着目し、他資格との比較など、様々な観点から分析してみたいと思います。
この記事が、公認会計士の人数について知識を深めるだけでなく、昨今の公認会計士を取り巻く状況についても考えるきっかけになれば嬉しいです。
現役会計士の筆者が丁寧に解説しますので、是非最後までお付き合いください!
公認会計士は多すぎるの?
これは人により意見が分かれると思いますが、監査法人にいた筆者の意見としては多すぎると感じたことはありません。
特に繁忙期は人員不足により、例年ものすごい残業時間になります。
繁忙期の残業状況について知りたい方は是非以下の記事も読んでみてください。
公認会計士の残業時間ってどれくらい?現役の私が徹底解説しちゃいます!!
では、まずは実際の公認会計士の人数をみてみましょう。
公認会計士の人数
以下は日本公認会計士協会が公表している会員・準会員数の推移(1 0年毎及び最新年度、1 2月末日現在)から抜粋したものです。
年 | 会員数 |
2000年 | 13,375 |
2010年 | 21,496 |
2020年 | 32,744 |
2023年 | 35,858 |
確かに、過去と比較すると、公認会計士の人数が大幅に増加していることがお分かりいただけると思います。2000年と比べると現在の公認会計士数は約3倍弱ですね!
過去からの推移をみたら、多すぎると言われても仕方ないわね。
Q.日本の企業数は減少傾向にあるのになぜ、公認会計士数は増加しているの?
A.ご存じの方も多いと思いますが、日本の企業は年々減少傾向にあり、2023年度は約360万社となっています。
公認会計士の仕事は対会社向けに行われるため、企業数が減れば、業務も減るのが通常であり、公認会計士数も減少していくと考えられます。ところが、ここまで見てきた通り、公認会計士数が年々増加傾向にあるのはなぜでしょうか。
この背景には国際財務報告基準(IFRS)の導入や監査基準厳格化に伴う業務量の増加が挙げられます。
昨今、グローバルでの事業展開が増えたことから、IFRSを適用する企業が増加しています。(2024年5月末現在:281社)
IFRS導入となると、当然、企業も公認会計士も工数が増えるため、結果として人手が必要になります。
また、近年では社会から厳格な監査が求められており、監査基準も日々変化しています。
この基準の厳格化は監査手続の増加へと繋がっており、結果として公認会計士が必要とされているのです。
え、待って。多すぎるって言われてるのって公認会計士の試験合格者のことじゃないの?
ここで、整理しておきましょう。
例年、8月に実施される公認会計士の論文式試験に合格してもまだ正式な公認会計士ではなく、その時点では公認会計士試験合格者(準会員)となります。
正式に公認会計士と名乗るためには、2年間の業務補助等と3年間の実務補習制度を経たあとに、日本公認会計士協会が実施する”修了考査”という試験で合格する必要があるのです。
ちなみに、修了考査の大変さは以下の記事でご紹介していますので、興味のある方は読んでみてくださいね!(^^)
この修了考査合格後に日本公認会計士協会に備える公認会計士名簿に登録を受けて、初めて正式な「公認会計士」となることができます。
そこで次に、公認会計士試験合格者の人数についてもみておきましょう。
公認会計士試験合格者の人数
年度 | 合格者数 |
---|---|
令和3年 | 1,360人 |
令和4年 | 1,456人 |
令和5年 | 1,544人 |
例年、微増していることはお分かりいただけると思います。
また、ご存じの方も多いと思いますが、公認会計士は日本の三大国家資格と言われています。
そこで、その他の三大国家資格に当たる医師、弁護士の人数と公認会計士の試験合格者の人数を比較してみました。
令和5年 | 公認会計士 | 弁護士 | 医師 |
---|---|---|---|
願書提出者 | 20,317 人 | 4,165人 | 10,586人 |
合格者数 | 1,544人 | 1,781人 | 9,432人 |
合格率 | 7.6% | 42.8% | 89.1% |
引用:法務省ホームページ
引用:厚生労働省ホームページ
医師、弁護士との比較では合格者が多いとは思えませんよね。
では、もし公認会計士及び試験合格者の人数が多すぎた場合、どうなるのでしょうか。
次は公認会計士が多すぎる場合のリスクについて考えてみたいと思います。
多すぎる場合のリスク
公認会計士の人数が多すぎる場合、主に以下の2つのリスクが挙げられます。
- 合格しても就職先がなくなる
- 昇格が遅れる
それぞれ詳しく解説します。
合格しても就職先がなくなる
結論から申し上げますと、これは現時点では心配ないです。ぶっちゃけ、公認会計士試験に合格すれば、就職はできます。
参考までに、公認会計士試験合格者の多くが就職する4大監査法人(新日本有限責任監査法人(EY)、有限責任監査法人トーマツ(Deloitte)、有限責任あずさ監査法人(KPMG)、あらた有限責任監査法人(PwC))の採用数と試験合格者の割合を見てみたいと思います。
まず、過去3年間の公認会計士試験合格者数を確認すると、いずれも1,400人強で推移しています。
年度 | 合格者数 |
---|---|
令和3年 | 1,360人 |
令和4年 | 1,456人 |
令和5年 | 1,544人 |
次に、4大監査法人の採用数を推定します。
有限責任監査法人トーマツの採用サイトの募集要項に、新卒の採用予定者数は300名程度と記載があるため、この情報をもとに採用数を推定すると、以下の通りとなります。
監査法人 | 採用数 | 備考 |
---|---|---|
新日本有限責任監査法人 | 300人 | トーマツと同様の採用数と想定 |
有限責任監査法人トーマツ | 300人 | トーマツと同様の採用数と想定 |
有限責任あずさ監査法人 | 300人 | トーマツと同様の採用数と想定 |
あらた有限責任監査法人 | 200人 | 規模を考慮し、200人と想定。 |
合計採用数 | 1,100人 |
いかがでしょうか。
1,400人強の合格者に対し、4大監査法人だけで1,000人以上の採用枠を設けています。
これだけ見ても、現在の監査法人への就職がそこまで厳しい状況ではないことがお分かりいただけると思います。
さらに、1,400人の合格者の中には民間企業やコンサルティング会社を志望される方や大学在学中の方もいるかと思いますので、競争率はさらに低いものとなります。
公認会計士の就職状況については以下の記事でも詳細に解説していますので、良ければ併せて読んでみてください!
公認会計士の資格を取っても就職できない!?嘘か本当か現役の私が解明します!
転職も可能なのかしら?
また、公認会計士であれば、転職も可能です。
私の同僚にも監査法人を卒業し、コンサルティング会社や民間企業の経理部、税理士事務所等に転職する人が多くいました。
正直、公認会計士になって、転職先に困ったと聞いたことも一度もありません。
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昇格が遅れる
結論から申し上げると、昇格が遅れることは確かにあります。
公認会計士の多い監査法人を例に挙げさせていただくと、大手監査法人では大まかに役職が以下に分かれています。
-
- スタッフ(新入社員はここからスタート!)
- シニア(インチャージ(現場責任者)を複数社持ち始めます)
- マネジャー(ここから管理職扱いで残業代がつきません)
- シニアマネジャー(マネジャーを数年間務めた後に昇格します)
- パートナー(監査報告書にサインをする人です)
監査法人にいた時の感覚的では、マネジャーまでは昇格できる人が多いですが、その先のパートナーに上がるにはかなり競争率が激しく、昇格するのが難しい印象でした。
そのため、公認会計士が多いと昇格の面では不利になるかもしれません。
まとめ
今回は公認会計士の人数に着目して、解説させていただきました。
公認会計士は多すぎると思う人もいると思いますが、実際に働いている側としてはもっと人手が欲しいぐらいでした^^;笑
なお、過去と比べると公認会計士数は大幅に増加していますが、監査法人等の採用数も増えているため、就職先はそこまで心配しなくても大丈夫かと思います。
最後まで記事を読んでくださり、ありがとうございました!