簿記1級を取得すると、公認会計士試験の一部が免除されたりしないのかな?
簿記検定の中で最難関とされる日商簿記1級。「公認会計士試験は合格したけど、簿記1級は不合格だった!」なんて話もちらほら耳にします。
そんなに難しい試験なら、公認会計士試験の免除要件になっていても良さそうですよね。
この点、よく勘違いされるのですが、残念ながら簿記1級を取得しても公認会計士試験の一部の科目が免除されることはありません。
勘違いされることが多い理由は簿記1級が税理士試験の”税法に属する科目”の受験資格の1つになっているからだと思います。
今回は簿記1級が公認会計士試験の免除要件になるのかのみならず、両者の違いを深堀りして解説していきます。
現役会計士の筆者が丁寧に解説しますので、是非最後までお付き合いください!
簿記1級は公認会計士試験の免除要件?
残念ながら、簿記1級を取得しても公認会計士試験の一部の科目が免除されるといった免除要件はありません。
また、逆に簿記1級を取得していなくても公認会計士試験は受験することができます。
というよりも、公認会計士試験を受験するために特別必要な資格は一切ありません。
学歴がなくても誰でも受験することが可能です!
Q.公認会計士試験に受験資格の制限はありますか?
A.受験資格の制限はありません。年齢、学歴、国籍等にかかわらず、どなたでも受験することができます。
出典:公認会計士・監査審査会HP
ちなみに、公認会計士の受験資格や学歴との関係については以下の記事で詳細に解説していますので、是非併せて読んでみて下さいね^^
公認会計士に学歴関係ないって本当?受験資格から職場の実態までお話しちゃうよ!
一方、税理士試験では、税法に属する科目の受験資格の1つに「日商簿記検定1級合格者」が含まれているため、簿記1級を取得していることに大きな意味があります。
〜補足〜
令和5年度(2023年8月)から、税理士試験の「簿記論」「財務諸表論」の受験資格が撤廃されたことから、会計2科目については日商簿記1級を経由せずに受験することが可能になりました。引用:国税庁ホームページ
このように、簿記1級は公認会計士試験の免除要件ではないものの、公認会計士試験と簿記1級には関連性があると考えられるため、今回はそれぞれの試験内容を深堀りしながら、その共通点と相違点を洗い出してみたいと思います。
公認会計士と簿記1級を比較してみよう!
試験概要
まずはそれぞれの試験制度の違いをみてみましょう。
簿記1級(統一試験) | 公認会計士(短答式試験) | 公認会計士(論文式試験) | |
---|---|---|---|
試験月 | 年2回 (6月、11月) | 年2回 (5月、12月) | 年1回 (8月) |
試験科目 | 2科目 ・商業簿記・会計学 ・工業簿記・原価計算 | 4科目 ・財務会計論 ・管理会計論 ・企業法 ・監査論 | 必須4科目+選択科目 ・会計学(財務会計論 /管理会計論) ・監査論 ・企業法 ・租税法 ・経営学、経済学、民法、統計学の中から1つ |
試験時間 | ・商業簿記・会計学:90分 ・工業簿記・原価計算:90分 | ・財務会計論:120分 ・管理会計論:60分 ・企業法:60分 ・監査論:60分 | 必須4科目+選択科目 ・会計学(財務会計論 /管理会計論):300分 ・監査論:120分 ・企業法:120分 ・租税法:120分 ・経営学、経済学、民法、統計学の中から1つ:120分 |
試験日数 | 1日 | 1日 | 3日 |
合格点 | 70%以上 ただし、1科目ごとの 得点は40%以上 | 総点数の70%を基準として、審査会が相当と認めた得点比率 | 52%の得点比率を基準として、審査会が相当と認めた得点比率 |
主な特徴としては以下が挙げられます。
- 簿記1級は1回の試験で完結しますが、公認会計士試験は短答式と論文式の二段階に試験が分かれています。(論文式についてはなんと、3日間に渡り試験を受けますので、体力的にもキツイですね。)
- 試験範囲を比較すると、公認会計士試験と簿記1級は財務会計論と管理会計論は試験範囲が大きく被りますが、公認会計士試験はそれらに加え、さらに監査論、企業法、租税法…と様々な科目が追加されています。
このように、簿記1級と公認会計士試験では一部範囲が被っているものの、公認会計士試験を突破するには簿記1級の知識だけではまだまだ足りず、さらに追加して知識を蓄える必要があることがお分かりいただけるかと思います。
では、簿記1級と公認会計士試験の勉強時間はそれぞれどれくらい必要になるのでしょうか。
次は勉強時間の観点から両者を比較してみたいと思います。
勉強時間
皆さんも聞いたことがあるかもしれませんが、公認会計士試験に合格するためには最低3000時間の勉強が必要と言われています。
一方、筆者の経験から割り出した簿記1級取得までの総勉強時間は約1000時間です。
簿記1級までの勉強時間は以下の記事を元に割り出しています↓
公認会計士 短答式試験までの勉強時間!合格者が実績と合格の秘訣を大公開!!
つまり、以下のような関係性が成り立ちます。
試験 | 総勉強時間 |
---|---|
簿記1級 | 1000時間 |
公認会計士(短答式) | 2000時間 |
公認会計士(論文式) | 3000時間 |
なお、皆さんの中には簿記1級を取得した後に、公認会計士を目指そうと考えている方も多いのではないでしょうか。
その方向けには簿記1級合格後、公認会計士の第1関門である短答式試験までに必要な各科目ごとの勉強時間について解説した別記事がありますので、読んでみて下さいね↓
簿記1級から公認会計士短答式試験までってどれくらいかかかるの?範囲から勉強時間まで丸わかり!
簿記1級と公認会計士の資格難易度ってどれくらい違うのかな?
次は簿記1級と公認会計士の難易度についてみておきましょう。
資格難易度
以下のサイトによると、公認会計士は最も取得が難しい資格とされており、国家公務員(総合職試験)と同じ超難関の偏差値77に位置しています。
一方、簿記1級は中小企業診断士や獣医師と同じ偏差値67となっていますので、難しい試験であることは間違いないですが、公認会計士と比べると難易度は少し劣るようです。
資格名 | 偏差値 |
---|---|
公認会計士 | 77 |
簿記1級 | 67 |
簿記2級 | 58 |
簿記3級 | 45 |
では次に、公認会計士試験と簿記1級合格者の就職先をみてみることにしましょう。
就職先
公認会計士も簿記1級も資格の難易度がかなり高いため、取得すれば就職先に困ることはないでしょう。
ただし、それぞれの就職先については異なる点があります。
皆さんは独占業務という言葉をご存知でしょうか?
独占業務とはその資格を有するものでなければ、携わることを禁じられている業務のことで、公認会計士には「監査」という独占業務が存在します。
そのため、公認会計士試験の合格者は監査をメイン業務とする監査法人に就職する人が多いです。
ちなみに、監査業務がどんな仕事なのか知りたい方には以下の記事がおすすめです↓
公認会計士の仕事内容や1日ってどんな感じ?繁忙期・閑散期のスケジュール例をご紹介!
例えば、日本にはBIG4と呼ばれる国際的な巨大会計事務所グループ(EY、Deloitte、KPMG、PwC)と提携している4つの大手監査法人があり、毎年1法人当たり、約200人〜300人を採用しています。
- 新日本有限責任監査法人(EY)
- 有限責任監査法人トーマツ(Deloitte)
- 有限責任あずさ監査法人(KPMG)
- あらた有限責任監査法人(PwC)
なお、公認会計士の就職状況については以下の記事で詳細に解説していますので、良ければ併せて読んでみて下さいね^^
公認会計士の資格を取っても就職できない!?嘘か本当か現役の私が解明します!
一方、簿記1級も難関資格ではあるものの、独占業務は存在しないため、多くの合格者は大手企業の経理部に就職することが多いです。
以下は日商簿記検定1級の出題範囲を一部抜粋したものです。
引用:日本商工会議所ホームページ
このように簿記1級では連結会計を広く学ぶこととなります。
ここで、連結会計とは子会社や関連会社を保有している場合に使用される会計手法であり、子会社や関連会社は中小企業よりも大企業の方が保有していること多いため、簿記1級を取得すると大企業に就職する人が多いです。
まとめ
今回見てきたとおり、簿記1級は確かに難関であり、公認会計士試験と被る部分も多くありますが、公認会計士試験はさらに様々な知識が必要とされているため、免除要件までにはなっていないようです。
免除要件にはなっていないものの、公認会計士試験を受ける過程として、簿記1級を取得することは実力を試す意味でも良い機会ですので、公認会計士を目指す皆さんは是非挑戦してみてください。
最後まで記事を読んでくださり、ありがとうございました!